異なるサイト構成を活かしたまま、セキュリティと運用を一元化
カシワバラ・コーポレーション様およびグループ会社様が運営する10以上のWebサイトを対象に、Cloudflareを共通基盤としたインフラの再構築を行いました。
グループ内には、コーポレートサイト、ブランドサイト、採用サイト、キャンペーンサイトなど、目的も運用体制も異なる複数のWebサイトが存在します。
本プロジェクトでは、すべてのサイトを一律に同じ技術へ置き換えるのではなく、それぞれの構成や運用方法を活かしながら、DNS、セキュリティ、配信、監視の仕組みをCloudflareへ集約しました。
主要なコーポレートサイトやブランドサイトについては、AstroとmicroCMSを採用してフロントエンドを刷新。グループ全体のガバナンス強化と、各サイトに適した柔軟な運用の両立を図っています。
プロジェクトの背景
グループの事業拡大やブランディング強化に伴い、Webサイトの数や、掲載する動画・画像などのコンテンツ量が増加していました。
一方で、各サイトは異なる時期に、異なる技術や運用体制で構築されていたため、次のような課題がありました。
- サーバーやDNSの管理先がサイトごとに分散している
- サイトによってセキュリティ対策や保守方法が異なる
- 高画質な動画や画像の増加により、表示負荷が高まっている
- 外部ベンダーを含む複数の関係者が、それぞれ異なる環境を運用している
- OSやミドルウェアの更新、障害監視などに継続的な保守コストが発生している
- グループ全体のWebサイトを横断的に把握しにくい
単にサーバーを移転するだけでは、こうした課題は解消できません。
そこで、カシワバラ・コーポレーション様およびグループ会社様が運営する10以上の公開Webサイトを対象に、Cloudflareを共通基盤としたWebインフラの再構築を行いました。
すべてを同じ構成にしない移行設計
グループサイトの統合では、すべてのサイトを同じCMSやフレームワークへ変更すると、既存の運用フローや外部ベンダーとの連携に大きな影響が生じます。
本プロジェクトでは、サイトの役割や更新頻度、運用主体、将来的な改修計画を整理し、それぞれに適した移行方法を選択しました。
移行設計の全体フロー
- グループ各サイトの構成、DNS、サーバー、CMS、運用体制を調査
- サイトごとの役割と更新方法、関係ベンダーを整理
- モダン化するサイトと、既存構成を維持するサイトを分類
- 主要サイトをAstro × microCMSによる構成へ刷新
- 既存CMSを継続するサイトは、主要サイトから環境を分離
- 全サイトのDNSと通信経路をCloudflareへ集約
- セキュリティ設定と監視方法をグループ共通の方針へ統合
- 段階的に切り替え、公開後の運用・監視体制へ移行
サイトごとの事情を尊重しながら、その上位にCloudflareによる共通基盤を設けることで、柔軟性とガバナンスを両立しています。
Cloudflareによる共通基盤の構築
10以上のWebサイトのDNSと通信経路をCloudflareへ集約しました。
各サイトのサーバーやCMSが異なる場合でも、インターネットとの接点をCloudflareへ統一することで、グループ全体に共通したセキュリティおよび配信方針を適用しやすい構成としています。
DNS管理の一元化
サイトごとに分散していたDNS管理をCloudflareへ集約しました。
各ドメインの設定状況を横断的に把握できるようになり、サイトの追加や移行、設定変更にも対応しやすい運用基盤を整えました。
CDNによるコンテンツ配信
画像、動画、CSS、JavaScriptなどの静的ファイルをCloudflareのネットワーク経由で配信することで、オリジンサーバーへの負荷を軽減します。
リッチコンテンツを多用するサイトにおいても、安定した表示を支える配信基盤を構築しました。
セキュリティ方針の統一
各サイトの前段にCloudflareを配置し、WAFやDDoS対策などのセキュリティ機能を活用できる構成としました。
個別のサーバーだけに依存するのではなく、グループ共通の入口で通信を制御することで、サイトごとに異なっていたセキュリティ対策を統一しやすくしています。
Astro × microCMSの共通コンポーネントを構築し、複数サイトへ展開
主要なコーポレートサイトやブランドサイトでは、AstroとmicroCMSを採用してフロントエンドとコンテンツ管理基盤を刷新しました。
サイトごとに個別の環境をゼロから構築するのではなく、複数サイトで共通して利用できる実装や設定を整理し、Astroをベースとした共通コンポーネントを構築。それぞれのサイトでは、この共通コンポーネントを活用しながら、デザインやコンテンツ、必要な機能を個別に実装しました。
これにより、各サイトのブランドや運用方針を尊重しながら、品質、保守性、開発効率をグループサイト全体で一定の水準に保てる構成としています。
共通化しながら、サイトごとの個性を維持
すべてのサイトを同じデザインや機能へ統一するのではなく、技術的な土台のみを共通化しました。
各サイトのデザイン、コンテンツ構成、必要な機能については個別に設計できるため、ブランドごとの表現や運用方法を損なうことなく、共通基盤のメリットを活かせます。
必要な箇所だけを動かすフロントエンド
Astroのアイランドアーキテクチャにより、インタラクティブな処理が必要な箇所だけでJavaScriptを実行します。
ページ全体へ一律にJavaScriptを読み込ませないことで、動画や高画質な画像を活用した表現と、軽量なWebページの両立を図りました。
microCMSによるコンテンツ管理
コンテンツ管理には、ヘッドレスCMSであるmicroCMSを採用しました。
表示を担うフロントエンドと情報を管理するCMSを分離することで、サイトごとのデザインや機能を柔軟に設計しながら、担当者が日常的にコンテンツを更新できる構成としています。
開発・保守を継続しやすい基盤へ
共通パッケージを活用することで、サイトごとに異なる実装や設定が無秩序に増えることを抑えました。
新規サイトの構築、既存サイトの機能追加、共通部分のアップデートを行いやすくし、複数のグループサイトを中長期的に運用できる開発基盤を実現しています。
また、静的な配信を中心とした構成により、従来必要だったOSやミドルウェアの管理負荷を軽減。保守作業だけにリソースを費やすのではなく、コンテンツ運用やサイト改善へ注力しやすい環境を整えました。
参照記事
https://www.liberogic.jp/topics/20250804-AstroComponent/
既存CMSを活かすための環境分離
採用サイトやキャンペーンサイトなど、外部ベンダーとの連携や更新スピードを優先するサイトについては、WordPressやMovable Typeなどの既存CMSを継続しています。
ただし、主要サイトと同じ環境内へ混在させるのではなく、サーバーと運用環境を分離しました。
万一、いずれかのCMSやサーバーで問題が発生した場合にも、影響範囲を限定しやすい構成です。
既存の制作・運用フローを大きく変更することなく、グループ全体のリスク管理を強化しています。
サイトごとに異なる構成をCloudflareで接続
主要サイトと既存CMSサイトは、それぞれ独立した環境で運用されています。
その一方で、DNS、通信、セキュリティ、監視については、Cloudflareを中心とした共通方針で管理します。
これにより、各サイトに適した技術や運用体制を維持しながら、グループ全体では統制されたWeb基盤を実現しました。
導入後の変化
項目 | 移行前 | 移行後 |
|---|---|---|
インフラ管理 | サイトごとに管理先や構成が分散 | Cloudflareを中心とした共通基盤へ集約 |
DNS管理 | ドメインごとに個別管理 | グループサイトを横断して管理 |
フロントエンド | サーバーやCMSへ依存した構成 | 主要サイトをAstro × microCMSへ刷新 |
コンテンツ配信 | オリジンサーバーを中心に配信 | Cloudflareのネットワークを活用 |
セキュリティ | サイトごとに個別対応 | 共通方針を適用しやすい構成 |
外部ベンダーとの連携 | 異なる環境が混在 | 既存CMSを独立した環境として分離 |
保守・監視 | サーバー単位での維持管理 | 全サイトを横断した監視体制へ移行 |
改善活動 | 維持管理へリソースを割きやすい | コンテンツ運用や改善へ注力しやすい環境に |
複数サイトを「統一」するのではなく「統合」する
本プロジェクトでは、10以上のWebサイトをすべて同じ技術へ置き換えるのではなく、それぞれの目的や運用体制に適した構成を維持しました。
そのうえで、Cloudflareをグループ共通の基盤として、DNS、通信、セキュリティ、監視を統合しています。
主要サイトはAstro × microCMSによってモダン化し、既存CMSを継続するサイトは独立した環境へ分離することで、パフォーマンス、運用性、セキュリティのバランスを図りました。
異なるサイトを無理に揃えるのではなく、違いを活かしながら全体を管理できる状態へ整えることが、今回のWeb基盤刷新における重要なポイントです。
チームの理解と協力によって実現したプロジェクト
10以上のWebサイトを横断し、それぞれの運用を継続しながら共通基盤へ移行する本プロジェクトは、技術面だけでなく、関係者間の連携においても非常にチャレンジングな取り組みでした。
サイトごとに異なる目的や運用体制、既存の制作フローを整理し、将来を見据えた新しい基盤へ移行できたのは、変化を前向きに受け入れ、プロジェクトを推進してくださったKASHIWABARAグループの皆様の深いご理解があってこそです。
また、ブランディングやクリエイティブを担った株式会社NDCの皆様、プロジェクト全体の進行・構成を支えた株式会社オリジナルテクストの皆様をはじめ、各サイトの制作・運用に携わる関係各社の皆様にも、多大なご協力をいただきました。
立場や専門領域の異なるメンバーが、それぞれの知見を持ち寄り、既存の仕組みを尊重しながら、より良いWeb基盤という共通の目標へ向かえたことが、本プロジェクトを完成へ導いた大きな力となりました。